漢字二万種が自由自在に打てる

漢字入力方式「葦手入力」のページ

難波江の葦手かきわけふみみれば濱つ千鳥の跡ぞおきける

 ようこそ。ここは、コンピューター用の漢字入力方式「葦手入力」(あしで入力)の公開と情報発信をするサイトです。葦手入力は、漢字の形を片仮名に分解して打鍵を与えて、あらゆる漢字を思いのままに入力できる新しい入力方式です。初めての方はページ下の説明書きをご覧ください。

R3/12/10 葦手入力第5版を公開しました。大幅に改修を行い、より使いやすくなりました。変更点は「ダウンロード」ページを御覧下さい。各種解説ページも改訂してあります。

 実演の動画を撮りました。葦手入力で般若心経を入力したものです。→https://youtu.be/jFbCAkP7-WY


目次

ダウンロード ……導入はこちらから

使用方法

打鍵字母・字素対応表 ……葦手入力で使う仮名と漢字の字形要素との対応表

文字分解法 ……字形から打鍵を導き出す手順と規則

字素習得の手引き ……打鍵の字母と字素との対応を覚えるための手引き。主要な偏旁の打鍵を列挙

偏旁部首打鍵一覧 ……字典の部首字およびその偏旁形の打鍵の一覧

工具

打鍵・分解式索引 ……個々の文字の打鍵や分解方法を調べることができます

シミュレーター ……葦手入力を体験できます

参考文献


更新履歴

R3/12/10 葦手入力第5版を公開。これに伴い、各種解説も書き換え。

R2/2/11 葦手入力第4版を公開。各種導入方法の解説を追記。

R1/11/26 諸般の事情によりサイトを移転。新URLは http://ashide.otodo.net/

過去の更新履歴


この漢字入力方式について

 葦手入力(あしでにゅうりょく)は、コンピューターで漢字を入力するのに、読み仮名の変換によらず、字の形から漢字を入力する漢字入力方式です。
 本方式は、漢字を一定の規則に基づいて分解し、それにより取り出された偏旁や点画の形を、片仮名の形に当てはめて打鍵を構成し、その仮名文字列を漢字に変換する仕組みを取っています。たとえば、「茄」は「サカロ」、「治」は「シムロ」、「夞」は「タトロヒ」(韓国の漢字)と打つことでその漢字に変換できます。複雑な漢字も、一定の規則に沿って分解すれば、「龍」は「ユタヘヘミ」、「嬴」は「ユレロナ」というように、漢字の形から一意に打鍵を導き出すことができます。
 もとは、日本語入力を使いながら漢文などを入力するために開発しましたが、これを使うことで、仮名漢字変換では入力の煩しい、普段見慣れない漢字、読みがわからない漢字、IMEに登録されていないような専門用語の文字や熟字、或いは新しい俗語、人名、地名、もしくは、漢文の文章や、古文書や古い文章の翻刻、創作の文章などを簡単に入力することができます。
 この入力法を使うには、専用のIME辞書をご使用の日本語入力ソフトウェアに登録するだけで簡単にできます。
 漢字を字形から打ち込む方式はタイプライターの時代から日本にも中国にもありますが、本方式は、香港や台湾で普及している「倉頡輸入法」を参考にしつつ、漢字の分解方法をより体系的に構築し、日本人が使いやすいように打鍵に片仮名の字形を利用する新方式として開発しました。仮名漢字変換の代替というよりは、入力の補助として、研究論文や小説の執筆、目録や名簿の作成などに役立つと思われます。

しくみ

 片仮名はそもそも、漢字の形を省略してできた文字なので、漢字を構成する要素に形が一致するものやよく似たものが多くあります。そこで、葦手入力では、様々な漢字を分解していって得られる漢字の基本的な構成要素を230前後に集約した上で、それらを形の類似や連想によって、片仮名46個に当てはめてあります(ンを含む。ヰ・ヱはイ・エに集約)。
 漢字一文字の打鍵は、最長で5打です。漢字一文字を分解して、その要素全てを片仮名に当てはめ、そのまま打鍵にすると、入力が冗長になるので、文字を規則的に分解した中で特定の箇所にある要素を5つまで取り出して打鍵にします。
 このように、漢字の要素と打鍵の仮名との対応を覚え、打鍵となる5要素の取り出すための分解の規則を習得することで、理論的には、コンピューターに内蔵されたあらゆる漢字が打てるようになります。現在はCJK統合漢字の基本約2万字に対応しています。
 分解の規則には複雑な決まりもありますが、漢字の多くは、他の複数の漢字を組み合わせることで成り立っているので、基本的な字さえ覚えてしまえば、大抵の漢字は打ち出せるようになります。

 打鍵は、個々の文字の視覚的な形と機械的に対応するので、覚えていない文字であっても、その字形を規則的に分解すれば、即座に打鍵を導き出し、入力することができます。また、使いこんでいくと体が打鍵を覚えるので、文字の形から一々打鍵を推理しないで流れるように入力することもできるようになりますので。
 なお、打鍵が仮名文字列で設定されていますので、ローマ字入力よりも仮名入力での使用を推奨しますが、入力の仕組みは仮名漢字変換と同じなので、ローマ字入力でも使用できます。配列によって打ちやすさは左右されますが、葦手入力専用の配列のようなものを新たに暗記する必要はありません。

特色

 葦手入力は、「漢字直接入力」(漢直)と称される入力法の一種であるといえます。漢直は、漢字を二打や三打の特定の打鍵の組み合わせに当てた入力方式で、ワープロ以前の古くからさまざまなものが開発・実用されており、打鍵数が少なく高速で打てることから、職業タイピストを中心に使用されてきているようです。漢直の打鍵の当て方は、方式によって大きく連想式と無連想式との二種類に分かれます。連想式は、打鍵の仮名列が、字の意味や読みや関係する事物などその漢字を想起しやすいものに工夫して暗記を便利にさせた方式であり、無連想式は、漢字と打鍵との関連性を排して、運指や打鍵の効率化に重きを置いた方式です。
 漢直は、漢字を高速で入力するという、職業タイピストの現場における能率に対しては効果のあるものですが、無連想式も連想式も、字ごとの打鍵を個別に覚えなければならず、膨大な量の暗記が必要になります。そのため、学習負担が多いので、一般の人々にとっては習得しづらい難点があります。また、人間の暗記力には限界があるため、必然的に打鍵を当てることのできる漢字の数が制限されて、あらゆる漢字が打てるわけではありませんし、暗記していない文字は入力することができません。暗記を便利にした連想式にしても、開発者の任意の連想によって打鍵が与えられているにすぎず、一つ一つ覚えていく必要があるのには変わりありません。
 葦手入力は、しくみは漢直の連想式に似ていますが、タイピングの専門職のための漢直とは異なり、万人があらゆる漢字を手軽に自由に打てることを指向したものです。そのため、①暗記量が少なくて誰でも習得しやすく、②コンピューターに搭載された様々な漢字を、③簡単に入力することができます。
 ①誰でも習得がしやすいとは、誰もが知っている片仮名の字形を利用して漢字の字形に当てはめてあることです。また、字形と片仮名との対応や、字形の分解の方法も規則的で覚えやすいものです。
 ②コンピューターに搭載された様々な漢字を入力できるとは、常用の基本的な漢字だけでなく、難しい漢字やあまり使われない漢字についても打鍵が付与されていることで、新字・旧字や異体字、中国の簡体字なども、コンピューターで標準で表示できるものに対応しています(残念ながら元々コンピューターで取り扱いが困難な字は対応していません)。
 ③簡単に入力できるとは、個々の文字の打鍵は字形の機械的な分解によって一意に決まるので、初めて見る字や普段使わない字でも簡単に打鍵を取り出して入力することができます。漢直だと、打鍵を忘れてしまうと入力できず、暗記をしっかりとしなければなりませんが、葦手入力の場合、個々の打鍵を暗記していなかったり打鍵を忘れても、その場で字形から導き出すことができます。また、そのようにして反覆して何度も打っているうちに自然に暗記できますので、入力のしやすさが習得のしやすさにもつながっています。

始め方

 葦手入力を使うには、当ページの目次の「ダウンロード」から辞書ファイルをダウンロードして、日本語入力ソフトウェアの変換辞書に導入すればすぐに始められます。
 導入する前にウェブ上で試してみたい場合は、目次の「工具」>「シミュレーター」で使い方を試すことができます。
 葦手入力が自在に使えるようになるには、「打鍵字母・字素対応表」のページにある漢字の構成要素と片仮名との対応と、「文字分解法」のページにある分解の手順・規則とを覚えます。
 「字素習得の手引き」「偏旁部首打鍵一覧」で、主要な字や偏旁の打鍵を例示してありますので、これに慣れれば大体の字が打てるようになります。
 最初は、規則を完全に覚えていなくても、「字素習得の手引き」を見ながら、シミュレーターで試して簡単に出せそうな文字をいくつか打ち出してみてください。大体の感覚がわかってきた所で、「文字分解法」で、分解方法を学びます。初めは全部を理解する必要はありません。分解方法の大筋がわかったら、適当な文字を打ち出してみます。このようにして、段々と手を慣らしながら、同時に規則を覚えていくと、楽しみながら習得できます。

 ちなみに、名称の「葦手」とは、平安時代以来使われた仮名の書体の一種のことです。その実態は諸説ありますが、室町時代には、和歌の一首の内容を絵と文字とで表現し、風景の中に文字を忍ばせる表現として使われていました(『五月雨日記』など)。この入力法は、絵でなく文字の中に散らばった仮名を拾い上げることで全体の一文字が浮かび上がるところを、葦手の書に見立てて、「葦手入力」と名付けました。

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 利用・改変・再配布は自由です。


謝辞 Y.T.さん T.S.先生 M.T.さん H.T.さん K.S.さん 等には多くの助言や協力を賜りました。ここにお礼申し上げます。


管理者・開発元 中山春明(神奈川県)

by Haruakira NAKAYAMA in Kanagawa Pref., Japan

連絡先はyoskxcm~~~gmail.comです。(~~~をアットマークに)