第5版の変更点


 第5版では、分解の規則を詳しくし、特に、縦に重なる上下結構の分解方法を変更して、一貫した手順で打鍵が取り出せるようになりました。また、いくつか字母・字素の対応を変更し、個々の文字の分解の定義も見直しました。これらに伴い、同一打鍵に複数の文字が重複する数が減りました。

 全ての変更点は網羅して記述できませんが、基本的な原理についての変更点を以下に示します。個々の打鍵の変更については、索引をご参照ください。

(一)結構の呼称の変更

(二)字母の変更

(三)新規追加の文字

(四)分解規則の変更

 上下に偏旁の重なって出来た文字は、組み合わせによって、上下結構として捉えるか、接合として捉えるかが、個々の定義によっていて、分解の方法に一貫性がありませんでしたが、上下の位置関係になるものは、例外(雨・虍)を除き、全て上下結構として定義することとしました。

 たとえば、「魚」は、【/{/𠂊,田},灬】(=クキツ)ではなく【/𠂊,{/田,灬}】(=クコキツ)というように、点画が接しているか離れているかに関わらず、より上の方を先に分割します。「恋」なら、【/亦,心】(=ユハルソ)と分割せず、最初に「亠」で分割して【/亠,{/{"リ,ハ},心}】(=ユリハソ)と分解します。「牽」も同様に、【/亠,{/{+幺,冖,},牛}】(=ユレワキ)となります。

 下辺に来る偏旁の打鍵の取り方に注意を要します。同じく「貝」が下辺に来る字でも、「賀」は【/加,貝】(=カロコニハ)ですが、「貧」は【/八,{/刀,貝}】(=ハアコハ)となります。また、「糸」が下辺に来る字では、「累」は【/田,糸】(=コキレムツ)ですが、「素」は【/キ,{/一,糸}】(=キヘレツ)となります。

 穴冠の字も同様です(第3版の形に戻る)。

 例外は、冠になる「雨」「虍」です。これらは、「一」「卜」の位置で上下に分解せず、この冠で一つのまとまりとします(結合の形式は「接合(&)」)。例外にする理由は、これらの冠を持つ字の打鍵の重複を避けるためです。

(五)三畳字の独自打鍵の廃止

 同じ偏旁を重ねて三角形の結構になる場合、特殊な結構として扱い、【馫:*香,{*香,香}】(=ノヨノヨヨ)というようにしていたのをやめ、普通の規則で一貫させます。

(六)分割の優先順位を新規設定

分解方法が複数考えられる場合の優先順位を設定します。その順位は次の通りです。同一順位の結構どうしの場合、位置がより前方(より上、より左、より外)にあるものを優先します。

 たとえば、「彦」の分解は、【~产,彡】(=ユフミ)と【/亠,{/丷,{~厂,彡}}】(ユソフミ)との二通りが考えられますが、「左上包囲(^)」よりも「上下(/)」の方が分解の優先順位が高いので、後者の分解方法を採ります。「扇」の分解も同様、【^戸,羽】(=ヘカフンン)ではなく【/一,{^尸,羽}】(=ヘカフン)になります。

 「黽」の分解は、【&ワ,{"{&,乚,丨},{-モ,ヨ}}】(=ワレシヨ)と【"{&ワ,{&,乚,丨}},{-モ,ヨ}】(=ワシモヨ)とが考えられますが、「懸架(")」よりも「接合(&)」の方が分解の優先順位が高いので、前者を採ります。

 「亟」の分解は、【/{"丂,{-口,又}},一】(=ヘヌヘ)と【/一,{/{"ク,{-口,又}},一}】(=ヘクヌヘ)とが考えられますが、「懸架」よりも「上下」の方が分解の優先順位が高いので、後者を採ります。

 下辺の要素の一部が上辺の要素に食い込むものは、「遊離」として定義します。例えば、「半」「龹」の「丷」、「脊」の「エ」、「幾」「畿」の「𢆶」、「㦰」の「从」などです。そこで、「畿」の分解は、【.𢆶,{^戈,田}】(=レムオコキ)と【^{.𢆶,戈},田)】(=レオコキ)とが考えられますが、「遊離(.)」よりも「上方包囲(^)」の方が分解の優先順位が高いので、後者を採ります。

(七)点画の結合方法の原則

 字を分解していく際、点画を括って一つの字素にまとめられる場合、それ以上分割せずに字素として取り出すのを原則としますが、括り方によって字素の取り出し方が複数考えられる場合に、括り方の優先順位をつけます。

 その優先順位は、基本的には、相離れた点画どうしよりも接触する点画どうしを優先して結合し、接触する点画どうしよりも交叉する点画どうしを優先して結合することとします。

 たとえば、「拝」「拜」の右辺は、点画を括ることを考えずに分解すると【/一,{+三,丨}】となりますが、「一」と「丨」とを「丅」にまとめることができるので、【+丅,三】と分解します。打鍵はそれぞれオマミ、ノオマミとなります。

 「余」の分解の方法は、【/亼,朩】(=ケホ)と【/人,{"于,八}】(=イテハ)との二通りが考えられます。この場合、離れた関係(亼=人一)よりも接触関係(于=一ナ)の方が結びつきが強いので、後者を採ります。

 「乘」の分解は、中を「丿・木」で分割した【/丿,{"木,北}】(=ノホヲヒ)と、「千・人」で分割した【+{"千,北},人】(=チヒイ)とが考えられますが、接触関係(千=丿十)よりも交叉関係(木=十人)の方が結びつきが強いので、前者とします(「乗」も同様です。)。一方、「乖」は上部を「千」に取り、【"千,北】(=チヲヒ)とします。

 「寅」は、中を「丅・日」と分割した【/宀,{/{+丅,日},八}】(=ウマヨハ)と、「一・由」と分割した【/宀,{/一,{/由,八}}】(=ウヘワハ)との二通りが考えられますが、接触関係(丅=一丨)よりも交叉関係(由=土ワ)の方が結びつきが強いので、後者を採ります。

(八)定義変更

 上述の規則や字母の改訂による各種の変更点は省略します。

(九)分解方法を固定する偏旁の新規設定

 「厭」「辰」「鹿」「麻」に従い、これらが上辺に来る字は、下辺の偏旁が垂れの下に収まるか・はみ出るかに関わらず、上下結構に固定します(【/厭,■】【/辰,■】【/鹿,■】【/麻,■】)。

 たとえば、旧版では「塵」「磨」などは、「广」による左上包囲結構でしたが、新版では【/鹿,土=ラヒセ】【/麻,石=ラホフロ】と、上下結構として定義します。

(十)「嬴」の類の字の打鍵

 「嬴」「羸」「臝」「蠃」「贏」「赢」「驘」「鸁」の字について、下辺を「月卂」と中部との左右中結構で解釈した従来通りの打鍵とともに、下辺を左右結構で解釈した打鍵も付与します(その打鍵はいずれも「ユレロナ」)。偏旁に来る場合は、従来の左右中結構による分解方法に従います。


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